帰化申請の条件に関する質問と回答例(素行条件)
平成24年7月9日を待つまでもなく、市民皆年金制度のもと、外国人であるか日本人であるかにかかわらず、公的年金に加入していないことは、もともとずっと「違法行為」でした。
経験の少ない事務所の方はご存じないことですが、年金支払義務があるのに支払っていない者や、年金加入義務があるのに加入していない者は、その違法事実が「判明し」、ある程度ひどい状況である場合には、帰化申請が許可されないことはありました。
また、取り下げや不許可にならないまでも、面接において、年金の加入状況や支払い状況は、ちょくちょく聴取されていたのです。
しかしながら、年金についての審査基準や聴取方法が全国的に統一されていなかったため、結局は、年金の未加入や不払いが「判明しない」場合も多く、また判明したからといって必ずしも取り下げや不許可になるというものでもなかったというのが実際のところでした。
ところが、平成24年7月9日からの、在留制度変更(入国管理法・住民基本台帳法改正、外国人登録法廃止)にともなっての帰化申請の審査厳格化にあたり、新しい帰化申請添付書類の中に、年金関係書類が追加されたため、今後は年金を無視しているような外国人は、一切、帰化申請ができなくなりました。
質問にあるような「不許可」とか「取り下げ」といった甘っちょろいものではなく、確実に「申請が受付られません」。
先述したように、年金については「これまでも」帰化申請の審査項目のひとつでした。
目に余るような年金に対する無視行為がないかどうかに対してはこれまでも刮目して審査されており、少なくとも法務局レベルではちゃんと「日本を守る」仕事をして来られていました。
ですから、申請支援センターから申請する方には、実はこれまででさえ、原則、年金対策の様々なアドバイスや方策を講じてまいりました。だから、当方から申請された方はこれまでの面接で年金に言及されても決して震え上がるようなことはなかったはずです。
しかしながら、絶対的な不許可事項とまではされていなかったようであり、実質上、ほとんど不問に近いような扱いであったことも事実です。最終的な審査基準はブラックポックスですので、外部からは知る由もありませんが、面接において言及された場合においても、法務大臣に送られる際の意見書に、些事のひとつとして加えられるぐらいの扱いであったのではないでしょうか。
そういう状況をよいことに、これまで様々な知恵袋サイトや、あげくの果てには、開業したばかりの行政書士のサイトなどにまで、「年金は気にしなくて良い」といった「日本国の将来にとって」誤った記載があふれるに至って、堪忍袋の緒が切れたというのが実際のところなのでしょう。
とくに素人同士が想像力で回答し合う各種知恵袋サイトのうそっぱち加減は尋常なものではありません。
堪忍袋の緒が切れたのは、法務局でも、法務省(=法務大臣)でもありません。怒っているのは、官公庁でも役人でもなく、日本の国を想う日本人です。それがわかっているかが帰化申請を無事に進めるポイントなのです。
言うまでもないことですが、年金未加入・年金未払いは、素行条件上の不許可条件となります。
国民年金法により、昭和36年以降は国民皆年金制度が始まり、それ以降は加入しないこと自体が、違法行為となっています。
「国民」皆年金という言い方をしますが、被保険者は国民年金法第7条によって定められ、20歳以上60歳未満の人すべてが「その国籍に関係なく」加入しなければなりません。
ただ、様々な年金の免除規定があり、適法に免除を受けていれば、素行条件上だけからは不許可とならない場合もあります。
しかし、帰化申請の条件は素行条件だけでなく、その他の条件のことも考慮しなければなりません。
そして、免除を受けなければならない状況というのは、生計条件を満たしていないことの現れである場合が多く、よほど慎重に、かつ、正直に正確に、生計の状況を説明できないと不許可となることでしょう。
はっきり申し上げて、専門家に帰化申請を依頼することをためらわなければならないような生計状況であれば、もう少し帰化申請を先延ばしにするべきかもしれません。
2号被保険者については他の添付書類から、順法に年金制度への加入していることが疎明できればそれで十分です。
問題となるのは1号被保険者です。20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人が1号被保険者にあたります。
1号被保険者は、自ら国民年金に加入し、自ら保険料を納付しなければなりません。違法に納付していない人は帰化申請が受付られません。審査さえしてもらえません。
年金の領収証や、ねんきん定期便などによって、年金への加入や、未払い金がないことを証明します。
「これまでさんざん年金について無視して来たが、何とか帰化申請をしたいと切羽詰まっているご都合主義の人」は、決まって「じゃあ、何年分払えば、帰化申請できるのか?」とさらにご都合主義の質問をされることがあります。
先述したように、昭和36年以降、日本で暮らしたかったら、年金に加入していなければなりません。
「何年払ったら帰化できるのか?」という質問は、日本人からしたら、はらわたが煮えくりかえるような、愚かな質問です。
新しい帰化申請制度上は、一応、受付の際に退出する証明書は直近1年間分ですが、領収証の日付やその他の状況から遅延していることや、過去に支払いを怠って来たことは自明です。
そして、過去の不払いが明るみになった際に、「何年払ったら帰化できるか?」などと考えていた人は淘汰されると肝に銘じていて下さい。
毎月コツコツと支払っていればなんとかなる額でも、滞納が重なると大変な額となっている事情はわかりますし心情も察していますが、全額納付できるかどうかは別として、少なくとも心を入れ替え、姿勢を正していただき、帰化が許可なるように導くのがASC申請支援センターの使命です。
このサイトも含めて、インターネット上にはいくつかの帰化申請Q&A集がありますが、Q&A集に書かれている回答は「あなたのケースには必ずしもあてはまるものではない」ということをご理解ください。
帰化申請の条件、つまり帰化できるかどうか、については、申請者の在留状況・親族関係・仕事・収入・資産状況・賞罰・課税納税状況・その他の過去の履歴・将来の予定などによって、ひとりひとり全員違いますから、本来、一般論として述べることは絶対にできないものですし、述べても意味のないものです。
とくに帰化申請の条件については、それぞれの条件の基準が他の条件の状況によって変わってきます。例えば、「5年間以上日本に住んでいて、仕事を始めて3年以上経っている人」でも、住所条件を満たす方もいれば住所要件を満たさない方もいます。飲酒運転やスピード違反などの交通違反については法務局は非常に厳しい立場を取っていますが、それでも「過去に飲酒運転がある人」であっても、素行条件を満たす人もいればその飲酒運転により素行条件上不許可となる人もいます。
数千件にのぼる帰化申請の相談を受けてきた経験から申し上げますと、「気になる条件以外は、まず問題ない」と自己判断されている方ほど、実際は帰化の条件を全く満たしていないことが多い傾向にあります。簡単に自己判断される方は、性格的にいい加減な方である率が高いからです。むしろ、「本当に許可条件をを満たしているのでしょうか?」と心配顔で相談に来られる方の方が問題なく進む場合が多いです。慎重に真面目に暮らしてこられている方だからです。
このサイトも含め、インターネット等の情報は「あくまでも一般論であり、あなた自身のケースは違う」ということと、「全ての専門サイトはビジネスでやっていますので、本当に大事な情報は公開していない」ということを十分に理解された上で、このQ&A集をお読みいただくようお願いいたします。
帰化申請についてもっと体系的に知りたい方は、ASC申請支援センターのホームページをご覧ください。もちろん、帰化申請のご依頼や韓国戸籍の翻訳や取り寄せも行っております。
毎週土曜日の午後に、大阪谷町線天満橋駅の大阪法務局に隣接するASC申請支援センター内、相談ブースで、帰化申請相談会を開催しています。帰化申請をご依頼される方は、電話予約の上、ご相談にお越しください。
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