帰化後の戸籍に関する質問と回答例(帰化事項)

転籍を行えば帰化事項が削除されると聞きましたが本当ですか?

帰化後の手続き

帰化後の戸籍の父母欄の訂正

簡単に転籍してはいけません

 転籍をすべきでないのに転籍をしてしまう人が増えてしまったことが、誤った知識の氾濫しているネット社会の大きな罪業です。

 帰化申請では既に帰化した親族の戸籍謄本を添付するのですが、転籍をされたご親族の戸籍を収集するたびに心が痛みます。戸籍に関する届け出は全て不可逆性があり二度とやりなおすことができませんから、本人が傷つかれてはいけませんので転籍の記載を見てもあえて指摘や非難はいたしませんが、転籍は複数の大きなデメリットをともないます。

 しかしながら、「社会の裏情報サイト」や、コミュニティー内で一般の方同士が質問し回答する「知恵袋サイト」、あるいは専門家であるはずの士業サイトなどで、不十分な情報が世の中に発信されたことが、誤った転籍や不用意な転籍、もしくは不要な転籍や無駄な転籍がなされてきた原因と言えるでしょう。

 「転籍をすれば帰化事項が消える」とか「転籍後の戸籍に帰化事項が移記されない」という言葉だけがひとり歩きするようになった結果が、現在の悲しい状況です。

 インターネットで「帰化事項が転籍で消える」と書いている行政書士の方は「ほとんど」といって良いくらい開業間もない方のように見受けます。ベテランは帰化事項の問題が非常に慎重な考察を必要とする事項であることを熟知していますから、ウェブサイトで「一義的な」コメントを書くことはしません。

 中には、転籍によって「妻・子・夫」の並びを「夫・妻・子」に整序するというような「無茶苦茶な事」を書いているサイトまである始末です。それらは帰化申請「前」に対策しておくべきことです。

  

転籍後の戸籍には帰化事項が移記されない

転籍後の戸籍には帰化事項は移記されないが・・・
 帰化事項は戸籍法施行規則に定められた移記事項に入っていません。

 ですから戸籍法108条の届出をした時には帰化時の戸籍に記載される帰化事項は移記(転記)されず、結果として編製された新戸籍には帰化事項は記載されません。

 転籍をしても元の戸籍は除籍となって保存されますから「転籍をすれば帰化事項が消える」というのは明らかな間違いですが、「転籍後の戸籍に帰化事項が移記されない」ということ自体は誤りではありません。

 しかしながら、帰化をされた方の戸籍上の痕跡というのは帰化事項に限った事ではありません。

 戸籍の父母欄の氏名なども指摘されることが多いですが、さらに申し上げると、帰化した方がもともと日本人だった方と違う部分は、帰化事項と父母欄のみだけでもありません。

 もしも、どうしても帰化をなさった痕跡を排除したいと希望されるのであれば、戸籍全体を見渡して様々な部分を確認しておく必要があります。そして、戸籍の事を気にされるのであれば、本来は子供が生まれる前であるとか、結婚をする前に、考慮しておくべき様々な事柄がありますので、帰化が許可になった後や帰化申請をする直前になってからでは、既に遅くどうにもならないこともあることは理解していなければなりません。

  

戸籍法がよくわかってなければ転籍してはいけません

 転籍自体は裏情報でも特別な手続きでもなんでもなく、法に定められた手続きの結果、現在戸籍謄本(全部事項証明書)を取得した際に少なくとも「帰化事項」だけは記載されない状況にすることができるのですが、多くの方がご存じのとおり「帰化事項」のみを伏せたところで父母の氏名欄その他の事項を見れば帰化された方であることは歴然としますのであまり意味のある行為ではないだけでなく、転籍は多くのデメリットをともないますから、転籍と移記事項の関係だけでなく、戸籍法全体を見渡して、その方の個別の戸籍の現在状況を把握し、親兄弟(夫婦ともに帰化されているならそれぞれの親兄弟)の過去・現在・将来の帰化の状況も十分に検討し、転籍前に行っておくべきことを済ませ、転籍の時期や転籍先も考え、さらに将来的な婚姻その他の身分関係の推移も予測してから行わないと、デメリットのみが残ってしまう結果となりますので、帰化者が「転籍後の戸籍に帰化事項が移記されない」ということのみを鵜呑みにして転籍をしてしまうことのないよう、従来より転籍と帰化事項の関係を専門家が語ることは自重されてきました。もちろん、市・区役所や法務局の戸籍課の方が転籍を勧めたり解説したりすることはありませんでした。

 しかしながら、転籍に関する知識や情報が少ないために、移記されないことが裏情報となってひとり歩きしてしまい、あろうことか専門家であるはずの行政書士の中にも転籍を勧めてはばからない方が見かけられるようになってきました。いくら開業したばかりで未熟であるとはいえ、戸籍は不可逆なものですので未熟ではすまないものですから、少なくとも専門家の側から転籍を勧めるようなことはあってはならないと存じます。

  

どうしても転籍をされるのであれば「事前に」専門家に相談すること

 尤も、帰化された方のお悩みはよく理解できます。「せっかく日本人になったんだから帰化した事実をできるだけ伏せておきたい」と願われる帰化者の思いを責めることはできません。

 その際には、ASC申請支援センターでなくても良いですから、信頼できる永年の経験ある行政書士等の専門家に必ず帰化後の戸籍や帰化前の本国戸籍などの内容をよく見てもらってから、転籍の準備はできているのか、個別の方がその時点で転籍することのデメリットは何があるのか、将来の戸籍はどうなるのか等の説明を受けてから行ってください。もちろん、転籍をしても戸籍が編製されなければ全く意味がありませんので、気を付けて下さい。

 すでに帰化申請をご依頼になられた行政書士がベテランの方ならその方に相談すればいいでしょう。「帰化事項」というものがそれはそれで非常に大事なものであること、また「戸籍の記載内容」なんて気にすることはないことを、まずは説明された上で、「どうしても依頼者が転籍を望まれるのであれば」様々なアドバイスをしてくれたり、場合によっては、転籍も含めた戸籍の最適化全体についての依頼を受けてくれることでしょう。

 残念ながら、帰化が許可になるかどうかに一喜一憂されている経験のない事務所の方ならあまり期待はできません。もともと帰化後の戸籍に関する展望を考えておられない場合も多いことも事実です。しかし、あなたが依頼されたのはあくまでも帰化申請なのですから、勉強中の行政書士の方に多くを望むのも酷ですので許してあげてください。

 さらに問題となるのは、戸籍法改正を逆手に取ったような方法での帰化事項の抹消などを持ちかけてくる者がいればこれは「完全な犯罪」です。業者による違法行為に加担することは絶対に避けなければなりません。そのような業者は告発して法の裁きを受けさせなければならないでしょう。

 いずれにしても転籍の際は、十二分にご留意ください。

 なぜなら、昔から「日本人は簡単に転籍などしない」のです。

  

質問をお読みいただく際のご注意

 このサイトも含めて、インターネット上にはいくつかの帰化申請Q&A集がありますが、Q&A集に書かれている回答は「あなたのケースには必ずしもあてはまるものではない」ということをご理解ください。

 帰化申請の条件、つまり帰化できるかどうか、については、申請者の在留状況・親族関係・仕事・収入・資産状況・賞罰・課税納税状況・その他の過去の履歴・将来の予定などによって、ひとりひとり全員違いますから、本来、一般論として述べることは絶対にできないものですし、述べても意味のないものです。

 とくに帰化申請の条件については、それぞれの条件の基準が他の条件の状況によって変わってきます。例えば、「5年間以上日本に住んでいて、仕事を始めて3年以上経っている人」でも、住所条件を満たす方もいれば住所要件を満たさない方もいます。飲酒運転やスピード違反などの交通違反については法務局は非常に厳しい立場を取っていますが、それでも「過去に飲酒運転がある人」であっても、素行条件を満たす人もいればその飲酒運転により素行条件上不許可となる人もいます。

 数千件にのぼる帰化申請の相談を受けてきた経験から申し上げますと、「気になる条件以外は、まず問題ない」と自己判断されている方ほど、実際は帰化の条件を全く満たしていないことが多い傾向にあります。簡単に自己判断される方は、性格的にいい加減な方である率が高いからです。むしろ、「本当に許可条件をを満たしているのでしょうか?」と心配顔で相談に来られる方の方が問題なく進む場合が多いです。慎重に真面目に暮らしてこられている方だからです。

 このサイトも含め、インターネット等の情報は「あくまでも一般論であり、あなた自身のケースは違う」ということと、「全ての専門サイトはビジネスでやっていますので、本当に大事な情報は公開していない」ということを十分に理解された上で、このQ&A集をお読みいただくようお願いいたします。

ASC申請支援センターの帰化申請相談会にご参加できます

 帰化申請についてもっと体系的に知りたい方は、ASC申請支援センターのホームページをご覧ください。もちろん、帰化申請のご依頼や韓国戸籍の翻訳や取り寄せも行っております。

 毎週土曜日の午後に、大阪谷町線天満橋駅の大阪法務局に隣接するASC申請支援センター内、相談ブースで、帰化申請相談会を開催しています。帰化申請をご依頼される方は、電話予約の上、ご相談にお越しください。

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帰化申請の条件Q&A