帰化申請の条件に関する質問と回答例(生計条件)

過去に自己破産をしていますが帰化できますか?

生計条件/帰化申請の条件/国籍法第5条1項4号

 借金をすること自体は誰からも非難されることのない、社会に暮らす人間としての立派な権利ですが、それが返済できない状況というのは、生計条件上だけでなく、素行条件上からも、あまり好ましいものとはいえません。様々な事情があるとはいえ、貸主に迷惑を掛けていることは紛れもない事実であるからです。

 とくに自己破産の場合は、免責許可決定によって破産債権の責任を完全に免れることになるので債権者に多大な迷惑を掛けることから、確実に素行要件上の不許可要件となるため「確実に」申請することはできなくなります。まずは、素行要件上から、「確実に」許可とならない期間は、特別永住者以外では5年間、特別永住者では法定期間より短く2,3年間です。

 ここで注意すべきことは、このことをもって、「免責から2,3年すれば、帰化申請ができると勘違いしている行政書士事務所が多くある」ことです。とくにインターネットのホームページでそのような書き方をしている方のほとんどが、帰化の実務経験に乏しい事務所であるといって間違いありません。自己破産は素行上の考慮期間を超えて重要視されるポイントです。
  さらに、まちがった情報を読んで不幸な結果となる帰化申請をされる方が後を絶たない状況となっています。

 次に、自己破産は、生計条件上さらに長い期間、帰化申請に非常に深刻な影響を与えることになります。自己破産をすると破産手続き開始決定と免責許可決定のそれぞれ約2週間後、官報(の号外)に裁判所による広告がなされ、信用情報機関の個人信用情報データベースに他の事故情報とともに官報情報として掲載されます(破産手続き開始決定日または(旧法上の)破産宣告の日より、株式会社日本信用情報機構において7年、全国銀行個人信用情報センターにおいて10年)。

 信用情報機関の個人信用情報データベースに掲載されている間は与信審査においてペナルティーを受け、結果的に生計や事業運営が思うように立ち行かなくて当然のことです。法務省や法務局も官報情報は確実に調査しますから、この間は生計条件上問題あり、という評価をいたします。

 ただ、生計条件に関することは現在の状況を加味して評価されますから、良い行政書士がついて、おおむね法定期間の前後ぐらいまで時間が経過しており、なおかつ経済的に完全に回復している物証を挙げることができれば、信用情報データベースに掲載されている期間中でも生計条件の審査を通過する望みが全くないわけではありません。

 しかし、行政書士に依頼しても、なかなか難しい案件となることは間違いありません。インターネット上であまりに短い期間が書かれていたり、逆に長い期間が書かれていたりするのは、開業したばかりの行政書士事務所の中には、ご自分の経験ではなくインターネットで集めた情報を集約してホームページを作成しているところも多く(なぜなら帰化許可は7ヶ月程度はかかりますが、開業されてまだその期間が経過していないので依頼者の許可自体経験していないはずなのに専門家を謳っているところもウェブ検索に出てきては消えていっているからです)、その中で素行要件上の不許可期間・事由や生計条件上の不許可期間・事由を混同されたものが、さらにコピーを繰り返されていることが原因と思われます。

 自己破産をなさった方は帰化申請をするときに、そのことばかりで頭がいっぱいで、他の条件や申請の内容が置き去りにされていて、結局申請してみたら自己破産とは関係のない部分で不許可になることなどはよくある話です。過去の違法行為が多ければ、自己破産後の審査基準も厳しいものになりますし、自己破産をしていることによって過去の違法行為に係る審査基準も厳しくなります。つまりは、総合評価として帰化にふさわしい人であるかを審査してされているということを忘れてはなりません。また、短期間に経済的に回復していたとしても、その回復の過程に問題はないのかとか、現在の財産の中に破産前からある隠し財産はないかとか、税務面などは普通の申請よりも特に力を注いで調査されます。帰化申請が不許可になるのみならず、場合によっては免責無効となりかねない問題が山積していますので、細心の注意を払って申請を進めてください。

 なお、債務整理その他の金融事故については、素行条件面では自己破産よりは緩やかに考えてくれますが、生計条件上は自己破産と同じように審査されます。また、生計条件の審査と、素行条件の中でも経済的なことがらについての審査は、申請者本人だけでなく、生計を一にする親族全員について審査されますことを十分ご理解ください。

 

質問をお読みいただく際のご注意

 このサイトも含めて、インターネット上にはいくつかの帰化申請Q&A集がありますが、Q&A集に書かれている回答は「あなたのケースには必ずしもあてはまるものではない」ということをご理解ください。

 帰化申請の条件、つまり帰化できるかどうか、については、申請者の在留状況・親族関係・仕事・収入・資産状況・賞罰・課税納税状況・その他の過去の履歴・将来の予定などによって、ひとりひとり全員違いますから、本来、一般論として述べることは絶対にできないものですし、述べても意味のないものです。

 とくに帰化申請の条件については、それぞれの条件の基準が他の条件の状況によって変わってきます。例えば、「5年間以上日本に住んでいて、仕事を始めて3年以上経っている人」でも、住所条件を満たす方もいれば住所要件を満たさない方もいます。飲酒運転やスピード違反などの交通違反については法務局は非常に厳しい立場を取っていますが、それでも「過去に飲酒運転がある人」であっても、素行条件を満たす人もいればその飲酒運転により素行条件上不許可となる人もいます。

 数千件にのぼる帰化申請の相談を受けてきた経験から申し上げますと、「気になる条件以外は、まず問題ない」と自己判断されている方ほど、実際は帰化の条件を全く満たしていないことが多い傾向にあります。簡単に自己判断される方は、性格的にいい加減な方である率が高いからです。むしろ、「本当に許可条件をを満たしているのでしょうか?」と心配顔で相談に来られる方の方が問題なく進む場合が多いです。慎重に真面目に暮らしてこられている方だからです。

 このサイトも含め、インターネット等の情報は「あくまでも一般論であり、あなた自身のケースは違う」ということと、「全ての専門サイトはビジネスでやっていますので、本当に大事な情報は公開していない」ということを十分に理解された上で、このQ&A集をお読みいただくようお願いいたします。

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 帰化申請についてもっと体系的に知りたい方は、ASC申請支援センターのホームページをご覧ください。もちろん、帰化申請のご依頼や韓国戸籍の翻訳や取り寄せも行っております。

 毎週土曜日の午後に、大阪谷町線天満橋駅の大阪法務局に隣接するASC申請支援センター内、相談ブースで、帰化申請相談会を開催しています。帰化申請をご依頼される方は、電話予約の上、ご相談にお越しください。

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